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戦略 戦術の本質
戦略・戦術の本質は、最小のエネルギーの損耗で最大の効果を収めること。
※ 重要なことは、投入する戦力ではなく、消耗するエネルギーと効果との関係である。衆(多・大)を以って寡(少・小)を撃つ場合も、寡(少・小)を以って衆(多・大)を撃つ場合も本質は同じである。
戦略の原点
戦略の原点は、優勝劣敗の原理からいって弱者と強者の戦略である。しかも本当に必要なのは弱者である。弱者は原理に逆行して勝利を得ようとするからだ。戦略の原点は弱者の戦法であるにしても、強者も弱者同様、戦略が必要であり、戦略の本質を明らかにするとなれば、強者の戦略にもメスを入れることが必要だということだ。-- 武岡先生著「弱者の戦略・強者の戦略」(1989年 PHP研究所)より --
状況判断と戦略戦術
「状況判断」は目的・目標を達するため、各々の状況に沿ってどのような行動をとるのが最も効果的かを判断することである。その「状況判断」に基づいた行動が目的・目標に対する「戦略・戦術」となる。
戦略 戦術
-- クラウゼウィッツ「戦争論」より --
- 戦略の語源はギリシャ語の詭計である。しかし、詭計が戦略ではない。
- 詭計にも相当の労力と時間とが必要であり、下手をすると本来の戦力を減らす。責任ある将帥はこれを好まない。詭計よりも、明察力のほうが大切である。
- 敵の戦闘力の破壊という戦争本来の手段をなるべく使わないで済まそうとする戦略は誤りである。しかし、敵の戦闘力を直接破壊することだけが戦略ではない。
- 十の力をもって一時間でできる仕事は、五の力をもって二時間でできるという理論は戦争では通用しない。
- 戦略の第一条件は、できるだけ強大な戦力をもって戦場に臨むことである。
- 数の優勢ということは、勝利の諸要件のうちの一つにすぎない。
- 戦略的には、最初から全戦力を使用すべきであるが、戦術的には、逐次に使用することもある。戦術上のチャンスはしばしば終末期の混戦中に生ずるからである。
- 戦略は戦術を準備する。いつ、どこで、どのくらいの戦闘力をもって戦うかを決める。
- 戦略は戦術を収穫する。戦術的成果は、勝利でも敗北でも、これを取り上げて、戦争目的達成に利用する。
- 戦術的成功がなければ、戦略的成果はない。
- 戦略的には、最初から全戦力を使用すべきであるが、戦術的には、逐次に使用することもある。
- 戦争の終末を考えないで、その第一歩を踏み出すことはできない。
- 戦争においては、過望を抱くも、達成できることは稀である。
- 武力だけでは、戦争の目的を達成できない。
- 戦勝軍の終戦条件は過大ではいけない。武力の効果を過信するな。将来に禍根を残すな。
- 三敵に対する場合、第一敵・第二敵を破っても、第三敵に敗れれば、全敵に敗れたのと同じである。
- 十分でない戦力をもって戦争を開始することは、成功しないばかりでなく、かえって害がある。
- 一息に全作戦を実行し終われるだけの力を貯えてから仕事に取りかからねばならない。小飛躍は大飛躍より容易ではあるが、広い濠の半分だけを、まずli飛び越えるということは不可能である。
- 戦いは、勝とうと思う者同士の抗争である。必勝の条件というものは望めない。準備において、できるだけ勝利の条件をととのえ、実行に当たっては打算を超越して断行せよ。
- 作戦は幾何学的形式(態勢)の優越だけで成功するものではない。
- 大きい成功をすれば、小さい成功はこれについてくる。いたるところで勝つ必要はない。
- 一連隊の敗戦は、一軍の戦勝によって盛り返すことができるが、一軍の敗戦は、一連隊の戦勝では盛り返 せない。
- 決戦時には、勝敗両者ともに危機にある。精神力を失うことが、勝敗の分かれる原因である。
- 防御は攻撃よりも堅固な戦闘方式である。防御は、待機と反撃よりなる、前者は後者に先行する。
- 防御の目的は消極的である。防御するのは、攻撃する力のないときにかぎる。
- 攻撃は防御よりも敗れやすい戦闘方式であるが、それ故に大なる成功を収めることができる。
- 勝つためには、常に敵全体の重心を目指し、全力をあげて突進せよ。敵の軍隊・首都(政治中枢)・同盟強国などは重要な突進目標である。目的はパリ、目標はフランス野戦軍(対仏作戦計画)
- 血を流すことを厭う者は、これを厭わぬ者によって滅ぼされる。
-- 大橋先生著「クラウゼウィッツ兵法 」(1980年 マネジメント社)より --
「作戦・戦闘」 と 「戦略・戦術」
作戦・戦闘は戦略・戦術を行動化したもので、外見的な状態である。戦略・戦術は内面的なもので、作戦・戦闘を内部から操縦するソフトウエアである。それは勝ち方に関する「理念」と考えられる。したがって戦略・戦術は作戦・戦闘の「頭脳」であり「心」である。故に、「状況判断」「作戦計画」及び「作戦」「戦闘」においては、これぞという「勝ち目」や「決め手」を持たないままの攻勢、持久等の通り一遍の計画や行動であってはならない。常に変化、交錯する情報の中で的確な「状況判断」を行うために目的・目標を確立させることは最も重要なことであるが、戦いに打ち勝つためには、それらの情報(戦いの要素)の中に「彼我の虚実」を見出し、明確な戦略・戦術に基づいた果敢な「実行力」が必要である。